初めに
こんにちは、くじらです。
本日は、マクリーン事件について、
判例百選(書籍・第7版)を参考に、重要な点だけまとめます。
事件概要
論点
この事件の論点は、
①外国人の人権享有主体性、②外国人の政治活動の自由、③外国人の在留の自由です。
経緯
アメリカ国籍を有するマクリーンさんがいました。
彼は、語学学校の英語教師として、在留期間を一年とする上陸許可により日本に入国しました。また、英語教師の傍ら、琴と琵琶の修練を専門家に師事して、日本古来の音楽文化の研究をしていました。(日本人より日本人してますね。)
英語教師と音楽研究を日本で続けたい彼は、1年間の在留期間の更新を申請します。しかし、出国準備期間として、4か月だけ在留、つまり、それまでならいていいよと返答されます(要は、断られたわけですね。)。
これを受けて、もう一度更新申請をしますが、その4か月経過以降は、在留を許可しないと処分をうけます。
本件処分の理由は、2つありました。
一つは、無届転職。これは、はじめの学校を辞めて、同種の学校に無届で転職していたそうです。
もう一つは、政治活動。具体的には、彼は、「ベトナムに平和を!市民連合」という、通称「ベ平連」に所属して、アメリカのベトナム戦争介入の反対や、日米安保条約反対、出入国管理法案反対を訴えるデモ活動や集会に参加していたみたいです。
彼は、本件処分の取消しを求めて出訴。そして、上告するところまでいったわけですね(ちなみに、上告は法律審です。)。
この判例の本論
外国人の人権享有主体性
この判例は、外国人の人権享有主体性について、権利性質説に立つことを明らかにしました。
権利性質説
保障されない人権の代表例は、参政権、社会権、入国の自由などです。
精神的自由には、原則として保障が及びます。
政治的活動の自由については、
①限定保障説、②無限定保障説があり、①が通説・判例。
本判例も、①の限定保障説に立ちました。
つまり、保障はするが、外国人には日本国民(日本国籍を有する者)とは違う特別の制約が許されるというものです。
最高裁の主張の概略
1 Xの政治活動の自由は憲法上保障される。(←保障はされているんです!)
2 しかし、外国人の基本的人権は、在留制度の枠内で保障されているにすぎない。
3 法務大臣の在留制度への裁量は広範。ゆえに、司法審査の範囲は限定される。
3ー2 というのも、国際慣習法上、外国人の入国の自由は保障されていない。ゆえに、在留の自由も法務大臣の裁量にまかせるのでなければということ。
結論について
政治活動の自由は原則保障されるし、彼の政治活動も保障される。しかし、在留の更新の法務大臣の判断において、更新を許可しない消極的な事情として、外国人の政治活動を斟酌するのは許される。
そういう結論に対して、学説では、在留時の政治活動が消極的な事情として更新の判断に影響を与えるこの法理は、憲法上保障されているはずの政治活動を外国人が行うことに対して、強烈な萎縮効果を与えるものであるとして、批判の声も強い。
森川キャサリーン事件(再入国の自由)や指紋押捺事件でも、本件マクリーン事件が援用されている。
おわりに
マクリーン事件(外国人の人権享有主体性、政治活動の自由、在留の自由)についての今日のまとめは、以上になります。おつかれさまでした!
このブログでは、法律学習者が躓きやすい法律の用語やイメージについて分かりやすく解説することをモットーに日々新しい記事を載せています。
ぜひ他の記事もご覧になっていってください!
おつかれさまでした!
コメント