はじめに
こんにちは、くじらです。
今回は、相殺の機能について、分かりやすく解説します。
機能の名称を挙げ、そのイメージを簡単に平易に解説したいと思います。
参考文献
中田裕康著『債権総論 第四版』(2020年、第四版、岩波書店)。
前提知識
相殺の意味
簡単なイメージとしては、
AとBが互いに債務を有していたとして、その差引計算をして互いの債務を消滅させ、債務の額を調整することです。
「各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる」(民法505条1項本文)。
具体例としては、
AB間において、AがBに100万円の債務を有し、Bが200万円の債務を有する場合があるとする。この場合、片方が相殺の主張をして相殺の要件が満たされていれば、双方の債務の対当額である100万円について、債務が(遡及的に)消滅します。
対当額というのは、額が重なり合う範囲という意味。
相殺の要件
①相殺適状にあること(それすなわち、簡単に言えば、「相殺をしようとすればできること」)、②相殺の禁止に触れないこと、③相殺の意思表示(その内容については、相殺する債権の同一性を認識できる程度に示せば足りる。)である。
相殺の効果
簡単なイメージとしては、
相殺しようとすればできる時に遡って、両債務の額が重なり合う範囲で債権が消滅していたことになるということ(債権の遡及的消滅)です。
結論
3種類の機能(趣旨)
①簡易決済機能、②公平保持機能、③担保的機能。
それぞれの趣旨のイメージ
①簡易決済機能
これは、互いのを合計して二度の現実の弁済をする必要性がないことです。
つまり、相殺によれば、観念的に片方の債権を回収することができるのです。
②公平保持機能(無資力危険の公平な分担)
当事者間の関係おいて、仮に相殺の制度がなければ、弁済期を過ぎても弁済をしない不誠実な債務者が無資力となったときに、片方の債権者は満足を受けられない結果となり公平を害する。
したがって、相殺制度があることで、双方が同時に履行する状況を生み出し、不誠実な債務者が弁済をなかなかせずに無資力になり他方債権者を害することを防ぐことができるのです。
③担保的機能
無資力となった当事者に対する他の債権者との関係において、相殺した者は、債権の回収を他の債権者に優先できることをいいます。
両債権を有する相手が無資力になった場合、相殺の意思表示をした者は、両債権の額が重なり合う範囲で、債権を回収することができる。
詳細な説明は割愛するが、通常、相手が破産などすれば一般債権者は破産者の有する財産から債権額に応じた分配しか債権を回収できない。
しかし、相殺制度があることで、相殺の対象となる債権を有する者は、額が重なり合う範囲で、自己の債権を、他の債権者に優先して独立に回収できるのです。
補足解説
自働債権と受働債権
意味
自働債権とは、相殺の意思表示をした者が有する債権。
受働(「どう」の漢字注意。にんべんあり。)債権とは、相殺の意思表示を受けた者が有する債権。
自働債権と受働債権というワードは、相殺の場面でしか使われない。
終わりに
まとめると、
相殺の機能(趣旨)は、3つある。
二度弁済がいらないとする、簡易決済機能。
双方が同時に債務を履行する状況を作り出すという、公平保持機能。
他の債権者に優先して自働債権を独占的に回収できるという、担保的機能。
ーーー
要件は、①相殺適状にあること、②相殺の禁止に触れないこと、③相殺の意思表示。
効果は、相殺適状時に遡って両債務が、対当額につき消滅する。
相殺の意思表示をする者が有する債権が、自働債権。
いかがでしたでしょうか。
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