はじめに
こんにちは、くじらです。
この「カテゴリー」では、イメージしづらい法律用語をわかりやすく簡単に解説することをモットーに連載しています。
今回は、物上代位について、その輪郭を一緒につかみましょう!
参考文献
松岡久和著『担保物権法』(第1版、2017年、日本評論社)。
結論
意味
ひと言でいうと、
「抵当権や先取特権、質権の対象物の価値が変形したとき、その変形物にも抵当権等の効力が及ぶ」ことです。
「担保物権法」の範囲に関わる用語です。
物上代位は、先取特権に関する民法304条で規定。
これを、抵当権と質権にも準用します。
つまり、先取特権、抵当権、質権、の3分野で、「物上代位」という概念は出てくるということです。
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第304条
- 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
- 債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。
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第372条
第296条、第304条及び第351条の規定は、抵当権について準用する。
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第350条
「代位」をより分かりやすく解説
「変化した代替的な価値」を新たに担保にとろう(分かりやすく言うと、自分が相手に対して有する債権を回収できない場合の新たな「人質」にとろう。)ということです。
担保物権の観点から掘り下げてみる
価値権説
担保物権は、対象物そのものではなく、
その競売や収益執行によって得られる金銭から、優先的な弁済を得られることによって価値支配を実現するものです。
したがって、
担保物権が価値権であることから、物上代位が認められるのは当然の帰結といえます。
特権説
また、担保権者の保護の側面も、物上代位には認めることができます。
例えば、
自身が有する債権の回収の担保のために、相手に相手が所有する不動産に抵当権を設定させたとして、その不動産が第三者の事実的不法行為により滅失したとします。
その相手は、損害賠償請求権としてその不動産の滅失という損害を埋め合わせることができます。
ある意味、実質的な損害はないといえましょう。不動産の価値→損害賠償請求権、といったイメージです。
これに対し、
債権者の私は、抵当権者として、担保不動産という債権の人質を失いました。
これでは、抵当権設定であり、不動産所有者の債務者は実質的な損はなく、むしろ人質である担保不動産を解消してむしろ得をしている。
そして、債権者である私は人質を失い損をしたようなことが、偶然の結果により生じます。これは妥当ではありません。
補足
物上代位権の対象は、そのほとんどが金銭債権です。
代替的物上代位と付加的物上代位があり、付加的物上代位には争いがあります。
終わりに
まとめると、物上代位とは、先取特権や抵当権、質権の対象物が、売却・賃貸・滅失・損傷によって別の価値に変換されたとき、その変換された価値にもその権利の効力が及ぶというものでした。
「物上代位権の行使として、○○債権を差し押さえる。」
応用的には、このような使い方をします。この記事の説明を読んだ後なら、意味がわかるのではなでしょうか。「○○債権」というのは、いわば価値変形物であり、その代替的な価値に、抵当権等を及ぼし、自身の債権の分の金銭を回収しようと差押えをしているわけです。
今回は以上です!おつかれさまでした。
このブログでは、他にも抵当権の設定は債権者と債務者どちらがするのかといったような、法律を勉強するものなら一度は躓く観点について分かりやすく解説をしたりしているので、ぜひ他の記事もご覧になってみてください!
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